朝礼訓辞

平成28年11月 朝礼訓辞

 私の出た高校では、1年生からフランス語の授業があり、また倫理という授業もありました。
いきなり、人生は生まれながらに善であるか、悪であるか、つまり性善説と性悪説を
どう思うか、どちらが本当なのかなどの質問をされ、何のことか解らず、ちんぷんかんぷんで、
きょとんとした時間を過ごしたことを憶えています。

有名な「トロッコ問題」という倫理学の問題があります。
今、ブレーキの壊れたトロッコが走っているとします。
その先には、トロッコが接近して来るのに気付かない5人の労働者が線路の補修をしています。
トロッコの接近を知らせる方法も、トロッコを止める方法もありません。
 ただ、トロッコと5人の間には線路を切り換えることの出来るポイントがあり、
あなたがそれを切り換えることが出来ます。
 しかし、切り換えた線路の先には、1人の労働者が同じように働いています。
あなたは、このポイントを切り換えることを選びますか。という問題です。
 悩んだ末にポイントを切り換え、1人を犠牲にすることを選ぶ人が多いそうです。
決断を先延ばしにすれば、5人が犠牲になるから、決断から逃れることも、
決して倫理的ではないのです。
 もともと、これは不条理な問題なのです。5人か1人かの選択しかない問題だからです。
私もどうするか、というと解らないのです。

 今、日本で現実に起こっている原発(原子力発電所)の問題が、これに似ている
のではないかと考えています。
原発を全部止めた場合、もし電力が足りなくなった時、医療の現場にいる私達にとっては
大変なことになります。病院では、冷暖房が効かなくなり、O2吸引が出来なくなり、
手術も出来なくなり、薬品の冷蔵保存が出来なくなり、食品も腐ってしまって給食も
不十分になります。人工透析の患者は、次々と死んでしまいます。どれ位の人が死ぬのか、
見当もつきません。
 逆に原発の事故が起り、放射能が大量に放出しますと、周辺の住民は、焼け死んでしまうか、
生き残っても白血病や甲状腺癌にかかり、命を落としてしまいます。
 果して、どちらを取ればよいのでしょうか。原発の問題がトロッコの問題に大変似ていて、
倫理上、どのように解決すべきか、私には判断つきかねています。
 皆さんはどちらを選びますか。どんなに考えられますか。

 倫理学とは、社会における人間と人間の関係とまたは道徳の本質について研究する学問
だそうです。
一方、哲学とは、世界、人生の根本原理を追求する学問で、やさしく言えば、人間の幸せ
を研究する学問だそうです。
 多くの倫理学者、哲学者が人間の幸せについて研究を探求し続けて居られるのです。

 私達は、それなりに医療・介護の現場で仕事に真面目に真剣に取り組んで行かなければ
なりません。

 寒くなって来ますので、風邪を引かないように、元気で一緒に働いて参りましょう。
昨日、医療センターで2名のインフルエンザ患者が出て居ります。
皆さん、早めにワクチンを接種して下さい。
入院患者さん達の予防接種もよろしくお願いします。

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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