朝礼訓辞

令和3年7月 朝礼訓辞

 昔、姫路というところに悪い代官がいました。代官の屋敷には、お菊という女の人が働いていました。悪い代官は、このお菊をいじめてやろうと思って、宝物の10枚1組のお皿を預けました。
 そうしておいて、お菊の知らない間にお皿を1枚隠してしまいました。
 或る日、代官はお菊に預けたお皿を持って来させ、お皿の数をかぞえさせました。ところが、代官が1枚隠してしまっているので、何度かぞえても9枚しかありません。代官は、何も知らないお菊に「おまえが盗んだに違いない」と言うと刀で切り殺して、お菊の死体を庭の井戸の中に投げ込んでしまいました。
 その夜、代官が寝ていると、枕元にお菊の幽霊が現れました。代官が驚いて逃げようとすると、お菊はどこまでもついて来ます。とうとう、代官は恐ろしくて死んでしまいました。
 それからも、その代官の屋敷の井戸の中から毎晩、真夜中になると、お菊の幽霊が現れて「いちまーい、にまーい、さんまーい、よんまーい、ごまーい、ろくまーい、しちまーい、はちまーい、くまーい」とお皿の数をかぞえます。おしまいの「くまーい」という声には、お皿が足りなくなったので殺されたお菊のうらみがこもっているので、その声を聞いた人は祟りで死んでしまいます。
 そのため、代官の屋敷は「さらやしき」と呼ばれるようになりました。

 種子島医療センターは、駐車場が足りなくて病院の隣にあった、今では誰も住んでいない土地を購入して駐車場を造りました。
 その土地の片隅に深い井戸がありました。私も小さい頃、勿論、水道など全くない頃でしたので、その井戸から水を汲んで飲んでいました。
 その井戸を埋めるのに、祭りをするから来てほしいということで、先月、祭りに行きました。
坊さんがお経をあげ、そのあと、小さな木の板で作った人形を投げ込み、塩とお酒と大豆か何か解りませんでしたが、穀類を投げ入れました。続いて参列者の何人かが同じように塩を投げ入れて祭事は終り、もう駐車場として使用されていると思います。

 井戸というものは古来、日本では一番大切なものとして扱われて来ました。3代前の鹿児島県医師会長は、よくこんな言葉を使われていました。「井戸の水を飲む時は、その井戸を掘った人の苦労を思い出し有難く飲め」と話されていました。私達は今、生きて働いているのは先祖のお陰だ、先祖を大切にしなさい。という意味も含まれていると思います。
「足下を掘れ、そこに泉あり」という言葉があります。私達は皆、自分の足下を掘って行ったら必ず泉が湧いて来ることを忘れている。あっちに行ったら水が出ないか、向うに行ったら井戸がないか、と思っているけれども、実は自分の足下に泉はあるのです。
 与えられた仕事をこつこつと地道にやり続けた先に、自分にしか到達できない泉があるのです。

 コロナのこともオリンピックのことも、どうなるのか解りませんが、私達は与えられた仕事をこつこつとやって行きましょう。
 体に気をつけながら今月も一緒に頑張りましょう。

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

トップへ戻る
スタッフ
アクセス
新着情報
ギャラリー