朝礼訓辞

令和3年6月 朝礼訓辞

 南日本新聞に南風録というコラムがありますが、そこに鹿屋体育大学の学生にPCR検査を行うことになり、一列に並んだ学生達の先頭のところに梅干しのツボを置き、匂いを嗅がせ、唾液の分泌を促した記事が出ていました。
 PCR検査には唾液で検査する方法、咽頭粘膜から採取する方法、鼻腔粘膜から検体を採取する方法があるようです。
 鼻腔と咽頭から綿棒で採取するのは痛いだろうということで、唾液からの検査が人気があるようです。

 梅干しを見ただけで、匂いを嗅いだだけで、唾液が出て来る訳ですが、これは動物の条件反射によるもので、有名な「パブロフの犬」という実験結果に基づいたものです。

 「パブロフの犬」とは、犬にエサを与えるとき、ベルを鳴らしてから与えるということを繰り返し、ベルを鳴らすだけで、犬がよだれを垂らすようになるものです。

 パブロフはソビエトの生理学者で、この実験は彼が1902年に発表したものです。現在でも条件反射の例として用いられています。最近では、この「パブロフの犬」の原理を利用して、薬物依存、アルコール依存、ギャンブル依存などの「依存症」に対する治療も行われています。
 例えば「覚醒剤は気持ちいい」という認識を「覚醒剤は効かない」という認識に変えて行きます。具体的には注射器を腕に当てるなど、ドラックを使う真似をして空振りを繰り返し体験させることで、脳や体に新しい記憶を覚え込ませます。

 梅干しを見たらツバが出る
 この曲を聴くと胸がしめつけられる
 人前に出ると体中から汗が噴き出す
 学校に行こうとすると腹が痛くなる

 これらは一度、条件づけられたら、その後は自動的に発動します。そしていつも同じ反応を繰り返すとき、それを習慣といいます。習慣とは、固着化した反応のことであり、その人の人生を大きく左右します。

 しかし、動物は本能や訓練によって条件反射をプログラムされているに過ぎませんが、人間の刺激と反応の間に選択の自由を持っています。自分にとって好ましい反応を身につけることさえ出来るのです。例えば、高所恐怖症の人であれば、ビルの1階から順番に登って行き「大丈夫」だと何度も確認することで、過去に作られた条件反射を作り変えることが可能です。つまり、あなたが過去にどんな経験をしていたとしても、どんなトラウマを持っていたとしても、克服することは、不可能ではないかも知れません。アルコール依存症やタバコを止められない人も、きっと治せるものであることを知ってほしいと思います。

 コロナがなかなか収束しませんが、オリンピックは強行されそうです。いづれにしても私達は医療人として朝夕、患者さんにやさしく接し、社会復帰の手助けができるように頑張って行きましょう。

 今日は良い天気ですが、今、梅雨の真只中です。体調に気を付け、今月も一緒に頑張りましょう。

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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