朝礼訓辞

令和4年4月 朝礼訓辞

 映画監督で信元直子さんという方が居られます。45才の時、乳ガンになられました。その前には、全治6ヶ月の骨盤骨折からやっと回復したばかりだったのに今度はガンの宣告です。

 何故私ばかりこんな目に会うのだろうと絶望し、運命を呪われたと述懐しておられます。そんな彼女のもとへお母さんが駆けつけて下さいました。自分もショックだったに違いないのに、そんな様子はおくびにも出しません。一寸、不謹慎なぐらい明るく振舞っていました。

 彼女が乳房切除を前にめそめそしていると、「お母さんの垂れたボインでよかったら何時でもあげるから」と胸をちらつかせて呉れました。抗癌剤の副作用で髪が抜けた時には、「全員集合のドリフターズのカトちゃんのはげヅラみたいな頭になっとるよ」と昔のテレビ番組を引き合いに出したり、彼女の頭をいじったりしました。


 「お母さんが泣いてあんたのガンが治るんならいくらでも泣くけど、そうでないなら笑わんと損よ。笑うたら免疫も上るんじゃけん。こんな時こそ、前向き、前向き」と云って呉れました。


 不幸の連鎖に打ちひしがれていた私も、母の少々乱暴な励ましで、いつの間にか、前を向けるようになっていたのでした。でも本当は陰では毎日、神社で手を合わせてから病院に来て呉れていたのでした。そして手術が成功した、と主治医から聞いた時には、何度も何度も、頭を下げて呉れたのです。そして退院した日、「一寸横になろうね」と云ってそのまま5時間も昼寝をしたお母さんはやっぱり疲れとったんだね。ぐうぐう眠る顔を見ながら、改めてお母さんへのいとしさがこみあげて来たのでした。


 WHO(世界保健機構)によれば、世界で毎年760万人の人が、ガンで死亡しているそうです。死亡原因の最多は肺ガンで、胃ガン、肝臓ガン、大腸ガン、そして次は乳ガンと続きます。


 ガンの歴史を遡るとガンの痕跡のあるミイラが紀元前3000年頃のエジプトのミイラから見つかっています。ガンは英語でCANCERといいますが蟹を意味するギリシャ語が語源で、乳ガンに侵された部分が蟹の甲羅に見えることや、転移の様子が、蟹が足を伸ばすように見えることからつけられたようです。


 ガンの発生原因は「細胞の遺伝子に傷がつく」ことです。正常な細胞は増えすぎないように出来ていますが、遺伝子に傷がつくと、ブレーキが壊れて、アクセルを踏みっぱなしの状態になり、細胞が、どんどん増え周りの組織を傷つけて行きます。

 遺伝子を傷つける要因は、食生活、環境、生活習慣、免疫低下などがあげられます。


 先に話しました信元直子さんのように、笑うと免疫力が増すと云われています。皆さん出来るだけ笑って過しましょう。


 早くも4月に入りました。新しい年度を迎えましたがオミクロンも収束していないのに、そこに更にまたBA2という新しいビールスによる第7波が来るかも知れません。ロシアとウクライナの戦争もまだ長引きそうです。笑って過せる環境にありませんが、これまでと同じようにウガイ、手洗い、マスクなど消毒に気をつけながら、今月も頑張りましょう。

 よろしくお願い致します。


抜萃のつづり その81号より引用
令和 4年 4月 6日(水)

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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