朝礼訓辞

令和4年7月 朝礼訓辞

 2年前2020年4月18日福岡県篠栗町というところで5才になる男の子が死にました。死因は餓死でした。何日も食事を与えられず、衰弱死したのです。

 犯人は勿論、母親です。40才になる母親は保護責任者遺棄致死の罪に問われ現在、裁判中です。生活に困り生活保護を受け生活していましたが、公判では共謀したとして、近くに住む49才になる女性も、同罪で起訴されています。


 子供の母親は、49才になる女性にマインドコントロールされ、生活保護費のお金をかすめ取られていた疑いがもたれています。

 6月9日に被告人質問があり、14日に結審があり、結果は10年の刑が下されたようです。49才女性による一家の支配がなされていたのではないか、とも云われています。


 死亡した5才の男の子の死亡当日の様子が判明しました。「きつい、頭が痛い」などと訴え、床の上で、両腕に顔をうずめ丸まるような仕草をし、目は焦点が合っていないような状態だったということです。そして最期にした言葉は「ママ、ごめんね」でした。

 母親は自分では通報せず、呼吸が止まったと解ったとき、49才の女性に連絡、その後護送され死亡が確認されました。49才女性は40才の子供の母親から生活費を欺き取ったとする詐欺罪でも起訴されています。


 自分に食事を与えず、何もかまって呉れない母親に最期に息をひきとろうとするとき、「ママ、ごめんね」という言葉を吐いたというこの記事を読んだとき、私はぐっと胸がつまり、涙が出て、止まりませんでした。

 血のかけらもない母親に向って、子供は自分のせいで、自分が悪かったから、云うことを聞かなかったから、などと謝りを込め、自然と口から出て来た言葉なのでしょうか。


 八木重吉という詩人の詩に「母の顔」というのがあります。
「お母さんの顔が見たくなった。お母さんの顔を通り抜けると本当のことがわかるように思えてならない」

 年齢に関係なく、誰でも優しいお母さんの顔に接すると、心が慰められ、すべてを包み込まれるような安心感を得ることが出来ます。
 お母さんは子供たちに「いい子になりなさい」「正しいことをしなさい」と愛情たっぷりも教え諭します。そういうお母さんの教えを超えて、その奥にある深い部分を感じ取って行く中で、自分が生きて行く上で大切なものが与えられ、それが人生を切り開く力になるというのが、この詩の意味です。

 それは愛の本質とも呼べるものです。

 母の顔を見つめ、何か食べるものを、何か飲むものを、と訴えたかったでしょうに。母の顔さえ、見ずに死んで行った5才の男の子の、声が聞えて来るようで心がはりさけそうになります。


 母親は子供を守らなければなりません。空の鳥でさえ、ひな鳥は口を大きく開けながら、親鳥が採って来た餌を待っています。そして一生懸命に餌を食べながら、やがて親鳥へと成長していきます。

 子供を大切に愛情をもって育てましょう。貧しい人、困った人にはやさしい言葉で慰め、労わってあげましょう。

 病室にいる患者さんに外来を訪れる患者さんにやさしい心で接しましょう。
梅雨も開け、暑い日が続きます。皆さん体調に気を付けながら、今月も一緒に頑張りましょう。


南日本新聞より抜粋
令和 4年 7月 6日(水)

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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