朝礼訓辞

令和4年8月 朝礼訓辞

 日本尊厳死協会という会が日本にあります。その中に、終末期医療における事前指示書なるものがあります。


1、私の疾病が現代の医学では不治の状態であり、既に死が迫っていると診断された場合には、ただ単に死期を引き延ばすためだけの延命措置はお断りします。
2、ただしこの場合、私の苦痛を和らげるためには、麻薬などの適切な使用により十分な緩和医療を行って下さい。
3、私が回復不能な遷延性意識障害(持続的植物状態)に陥った時は、生命維持装置を取りやめて下さい。

 以上、私の要望を忠実に果して下さった方々に深く感謝申し上げるとともに、その方々が私の要望に従って下さった行為一切の責任は私自身にあります。以上3つのポイントが指示されています。

 この会員の中の1人で埼玉県の73才になられる女性の投稿があります。尊厳死協会の会員だった夫は、緩和ケア病棟を希望し、私も一緒に寝泊りしていたので、夫の看取りは私がするとの覚悟でした。最後は「ありがとう」と言ってテレビドラマのようにするのが、私の理想でした。


 ところが亡くなる日の明け方「夫の呼吸がおかしい」とナースステーションに伝えたところで私の記憶が途絶え、次に憶えているのは、霊安室に向う夫のベッドの横に立っている私でした。その間の数時間の記憶が全くありません。誰が死亡を確認したのか?何を私はしていたのか?考えても考えてもその間の数時間は思い出せません。看護師さんは「一緒に最後の着換えなどしましたよ」と言っていましたし、携帯にはその間に子供や孫に何回も電話した履歴が残っていますし、葬儀屋さんにも電話をしています。しかし覚えていません。


 家族には「そのうち思い出すよ」と言われましたが蘇りません。あちこちで相談しましたが、「強いストレスによる一過性健忘症の一種で記憶は戻らない」と言われます。私は何も欲しくはありません。
「記憶がほしい」今、最後の大事な時を見届けられなかった後悔と寂しさで一杯です。それでも前を向いて進むしかありません。夫に恥じないように。


 以上が記憶が欲しい!という会員の1人の投稿文です。


 コロナの感染者が日本が世界一になりました。感染力が強いようです。これから更に感染を予防し、皆さんと一緒に患者さんのために頑張りましょう。コロナと熱中症に注意して下さい。

 今月もよろしくお願いします。


日本尊厳死協会 リビングウイル185号より
令和 4年 8月 3日(水)

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

<<新しい記事 過去の記事>>
トップへ戻る
スタッフ
アクセス
新着情報
ギャラリー