朝礼訓辞

平成31年4月 朝礼訓辞

 紀元前600年、今から約2600年前に作られたといわれるギリシャの寓話集、イソップ物語の中に「農夫と息子たち」というのがあります。
 死期の迫った農夫が息子たちを1人前の農夫にしたいと思って、枕許に呼び寄せ、こう云いました。
「伜たちや、わしの葡萄畑の1つには、宝物が隠してあるのだぞ」
 父親の死後、息子たちは、鍬や鋤を手に耕作地を隅から隅まで、掘り返しました。
 だが、宝物はどこにも見つかりませんでした。その代わりに、葡萄が何倍もの実をつけました。

 人間にとって苦労することが、宝物であるということをこの寓話は教えているのです。一生懸命に働くことが人間の使命であり、幸福につながるのです。

およそ300年前、ロシアの文豪トルストイは、詩や小説の他に、沢山の民話を書いています。
その中の1つに「人にはどれほどの土地がいるか」というのがあります
。 姉と妹の2人の姉妹がありました。姉は街の商人に嫁ぎ「私共は、きれいな大きな家に住んでいるのよ。子供達には着飾らせ、毎日おいしいものを食べたり飲んだりしているの。時には馬車で街に出て芝居を見たりするんだよ」と云いました。
妹は村で百姓のところへ稼ぎ、「私達の生活は派手ではないけれど、その代りに心配することは、何もないのよ。百姓の暮らしは、貧しいけれど、長続きがするのよ。金持にならなくても、ひもじい思いをすることはないからね」と云いました。

女達の話をそばで聞いていた妹の亭主のパホームという男が、よしきた、大きな広い大きな農地を手に入れ、沢山の収穫をあげ、大金持になってやろう、と決心しました。
パホームは早速、村長さんの所へ行き、土地を分けてほしいと頼みました。
村長さんが云うには「土地はいくらでも売ってあげますよ。1日いくらで売っているのです。つまり、その人が1日歩き廻っただけの土地を、みんなあなたにあげます。」

パホームの目は、燃え立つばかりに輝きました。
 どんどん、どんどん歩いて行きました。地平線まで歩きました。そして、そろそろ引き返そうとした時、太陽が西に傾きかけていました。
 やっとのことで、出発点に辿り着いた時、パホームは前のめりに倒れ込み、口から、たらたらと血を流し、死んでしまいました。
 下男が穴を掘り、パホームを埋めました。墓の穴の長さは頭から、足の先まで3アルシンでした。3アルシンとは、約180cmだそうです。
 だから、人間にとって必要な土地は2m(縦)×1m(横)もあれば十分なのです。

 この物語は、人間の欲望には制限のないことを教えています。  

 土地をいくら集めても、お金をいくら貯めても、それを善いことに使う以外は、何にもならないのです。
 何よりも、人間には「心」が一番大切なのであって、毎日毎日、心配事を抱えながらも一生懸命に働き、生きて行くことが、大切なのではないでしょうか。

 新しい年度に変りました。年号も変り5月1日より「令和」の時代になります。
 残された平成の最後のこの4月も、そして新しい年度も、皆さんと一緒に、種子島の心を病む人達のために、頑張って参りましょう。
 よろしくお願い申し上げます。

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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