朝礼訓辞

平成29年7月 朝礼訓辞

 アメリカに、O・ヘンリーという作家がいましたが、感動的な短縮小説を沢山書いています。
その作品の中の1つに「最後のひと葉」というのがあります。
 重い病気に冒されている、1人の少女が主人公です。
この少女の部屋の窓からは、向い側の建物の壁に絡まったツタの樹の葉っぱが見えていました。
そのツタの葉が冬の訪れとともに1枚1枚、風に飛ばされて行くのを毎日毎日、見つめていまし
たが、最後の1枚が落ちたとき、「私は死ぬのだ」と予感し、自分の心で決めていました。
 或る夜、嵐がやって来ました。
見るとたった1枚残っている最後のツタの葉が今にも風に吹き飛ばされそうになりながら激しく
ふるえていました。
 少女は、いよいよ最後の運命の時がやって来たと覚悟しました。
ところが、夜が明けると最後のひと葉がツタの樹に残っているではありませんか。
 それを見た少女の心には、ふつふつと生きる希望が湧き上がって来たのです。
実を云えば、そのツタの葉は、同じ建物に住んでいた老人が少女を力づけようとして、夜が
明ける前に建物の壁に描いた絵だったのです。

 このような物語ですが、いわば「嘘の効用」というものであります。
人をだましたり、窮地に追い込んだりする嘘はいけませんが、「人に希望を与える嘘であれば、
必ずしも悪いものではないし、良い結果をもたらすこともあるのです」

 70才を過ぎた人に「いつまでもお若いですね」とほめる。
ダイエット中の女性に「ずいぶん痩せましたね」とほめる。
元気がなさそうな人を「今日は顔色がよいですね」とほめます。
 こういったことも「嘘」なのですが、それで相手が喜び希望を持って進むことが
出来るのなら「嘘」も悪いものではないのです。
 水落先生は、私にあなたは120才まで生きられますよと、からかいとも御世辞とも
解らないようなことを仰言います。
人間の細胞の限界、生命のぎりぎりのところは、120才であるという学者がいます。
そのうち、私はぽっくり行くかもしれません。

 人に希望を与えるための嘘をつける人というのは、自分に正直に生きて来た人であり、
正直にやって来たからこそ、物事が良く見えるし、今何が大切なのかも解るのだ、と精神科医の
斉藤茂大先生が、ある本に書いて居られます。

 人に希望を与えるような嘘をつきましょう。人を傷つけるような言動は慎みましょう。

 梅雨の眞盛りですが、体に充分、注意して今月も一緒に頑張りましょう。

斉藤 茂太著
「なぜか人の心に残る人の共通点」より抜粋  

医療法人純青会 せいざん病院
理事長  田上 容正

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