過去更新記事
江角 悠子さんという、フリーライターの書かれた執筆に「結婚祝いの仏壇」というのがあり、
目につきました。
結婚が決まった時、お父さんが「結婚祝いには仏壇を送るから」と云われた時、江角さんは
「えっ、仏壇」と一瞬思われびっくりされたそうです。
ワインとか家具などを思っておられたのでしょう。
「私は、いらない」と即答されました。
実はお父さんは、お寺の住職でした。
お父さんにはお父さんのお考えがあり、嫁ぐ娘に最もよいと考えられたのでしょう。
でも、江角さんは、一生に一度のおめでたい機会に、死を連想させる仏壇なんて縁起が悪そう
だし、理由も分からないので、それから何度かお断りになったようですが、それでもお父さんは
どうしても仏壇を送りたいと半ば強引に押し切り、江角さんも渋々もらわれることになりました
。
しばらくして届いたのは、つるりとした木の香りのする美しい仏壇でそう広くない和室の
日の当たる棚の上に収まるコンパクトなすっきりとしたものでした。
部屋に仏壇があると、そこだけ重々しい空気が流れているようで、違和感があり、
しばらくは慣れませんでした。でも扉を開ければ仏様が鎮座しているので、手を合わせないと
いけないような気が段々して参ります。
そこで、朝なら「良い一日になりますように」とお願いし、寝る前には
「今日も無事に終わりました」と報告するようになりました。
最初は、仕方なく儀礼的にやっていたのが、毎日、手を合わせていると自然に、周りの人や、
今ある状況に感謝する気持ちが沸いて来るようになりました。
お寺の住職であられたお父さんが、日頃よく言っておられた言葉「おかげさまで」って、
こういうことか、とようやくその時、お父さんが結婚祝いに仏壇を贈ってくれた
意味が分かった、と書いておられます。
「お陰さまで」私達は、いろんな人のお世話になりながら、一生を一年を一日を生きて
行きます。
親、兄弟であり、友人であり、職場の同僚であり、学校の先生であり、お互いに沢山の人々と
助け合いながら生きて行くのです。
具合はどうですか?と患者さんに問う時は、
「お陰さまで、どうにか」と答えが返って来ると、とてもうれしく思います。
段々、寒くなって参ります。今年は、インフルエンザが大流行するのではと、
新聞の報道にあります。
体に気をつけながら、今月も一緒に頑張りましょう。
「抜粋のつづり」より
医療法人純青会 せいざん病院
理事長 田上 容正